菱刺し|こぎん刺し
菱刺し、こぎん刺しどちらもまるで織物のようにも見えるすばらしい刺繍です。
こぎん刺し、菱刺しは菱形を基本にした、布の織り目を数えながらその隙間に糸を刺す手法ですが、その刺し方は対照的で、こぎん刺しは基本的に織り目の奇数目を拾って刺していくのに対し、菱刺しは偶数目を拾っていく技法でそのほとんどが横長の菱形になります。こぎん刺しは伝統的な麻布を使って刺したものは、菱形が縦長になるようです。
こぎん刺しは東こぎん(弘前市東部)、西こぎん(弘前市西部)、三縞こぎん(北津軽群の金木町)の3つの地域で刺され、それぞれ特色があるようです。
身近な動植物を中心に、こぎん刺しは40数種類、菱刺しについては数種類の基本の模様があり、それを展開した模様が400種類もあると言われています。
また、同じ模様でも地域によって呼び名が異なるようで複数の呼び名をもつ模様もあります。
こぎん刺し、菱刺しにはコングレスという刺繍用の布を使って練習すると良いようです。コングレスは縦糸と横糸が等間隔に織られた布なので、こぎん刺しを刺す場合、形は縦長ではなく正方形に近い形になるようです。
基本的には平布で織り目を数えられる布を使います。また、オリムパスよりかわいらしいこぎん刺しのキットも多数販売されています。近年、その愛らしさに人気を集め、こぎん刺しもカラフルな色糸で刺されるようになりました。
糸は、甘縒りの刺し子糸やこぎん糸、フランス刺繍糸を使ったりします。菱刺しでは毛糸を使う場合もあります。
針は、織り糸を割らないように針先の丸いこぎん針やふとんとじ針、毛糸のとじ針など、布や糸の種類に合わせて使います。また、針先の丸いクロスステッチ針を使用しても良いようです。
模様の一部を一覧にしました。
菱刺し
- あいしげます
- あじろ(網代)
- 石畳
- いつつびし
- うまのまなぐ(馬の眼)
- うろこ紋
- 梅の花
- おおぎの紋こ(扇の紋)
- きじの足
- ここのつびし
- そばからびし(蕎麦殻菱)
- そろばん玉
- なしの紋こ
- ななつびし
- ねこのまなぐ(猫の目)
- ふでのほっこ
- べこのくら
- みっつびし
- やのは(矢の羽)
- やばね(矢羽根)
- ゆりの紋こ
- よっつびし
こぎん刺し
- あわばなこ
- 井桁
- 石畳
- 市松
- 馬の轡(くつわ)
- 梅の花
- うろこ
- かちゃらず(裏返しにあらずという意味)
- くぼ刺し(蜘蛛)
- くるびから(くるみのから)
- 鍬の刃
- 小枕刺し
- 島田刺し
- 竹の節
- だんぶりこ(とんぼ)
- とまらず
- てこなこ(蝶々)
- 猫の足跡
- 猫のまなぐ(猫の目)
- 花こ
- 花つなぎ
- ふくべ(ひょうたん)
- べこ刺し(牛)
- 豆こ
- 結び花
- やすこ刺し
- やのは(矢の羽)
- 四つこごり
参考書籍
- 八田愛子・鈴木堯子(1992)菱刺しの技法/美術出版社
- 荻窪 清子、Judith A. Clancy 他(1993)こぎん・刺子 京都書院美術双書
- 布芸展(2009)こぎん刺しの本
- 山邊 知行, 田中 忠三郎, 皆川 美恵子 他(2013)津軽こぎんと刺し子 はたらき着は美しい
- 弘前こぎん研究所(2013)津軽こぎん刺し 技法と図案集
- 倉茂洋美(2015)はじめての菱刺し/河出書房新社