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遊佐刺し子|庄内刺し子


庄内地方(山形県鶴岡市、酒田市、遊佐町、庄内町、三川町)に伝わる刺し子はひとくくりに庄内刺し子と呼ばれていますが、庄内地方の中でもいくつかの地域に分かれ、それぞれの土地に伝承された刺し子の文様や刺し子着が存在しています。
中でも遊佐町(ゆざまち)に伝わる遊佐刺し子は、印を付けずに一目ずつ刺す横刺しという手法と、独自の美しい文様とその種類の多さが大きな特徴となっています。
遊佐刺し子の代表的な伝統文様には、蝶刺し、そろばん刺し(商売繁盛)、菱刺し(武芸上達、運気盛隆)、鱗刺し(大漁祈願)、米刺し(五穀豊穣)などがあります。
また、他の地域でも見られる柿の花刺し(豊作祈願)、麻の葉刺し(赤子の成長を願う)、杉綾刺し(木の生長を願う)、山道刺し、段刺しなどの刺し文様も使われていたそうです。
これらの文様の数々は、昭和の中頃まで続いた、山から薪を橇(そり)に乗せて麓に下ろす作業の時に着る橇曳き法被(そりひきはっぴ)に刺されてきました。神に祈り、山に入る男衆に着せる橇曳き法被の刺し子は、家族の無事を祈る女性たちの深い愛情と、山岳信仰にもとづいた地域文化に育まれ、根付いてきたものだと言われています。
今日に至っては、印を付けずに針目の目数をたよりに刺す古来の刺し子技法を受け継ぐ刺し手の方は少ないようで、方眼紙に図案を描いた型紙を用いたり、布に直接、縦、横、斜めに目安となる基線を描いてから指す方法が多く使われているようです。
遊佐刺し子の伝統模様は応用形も合わせて70種類以上、庄内刺し子全体で見ると100種類以上あるのではないでしょうか。そのほとんどが遊佐刺し子が発祥と思われる一目刺しです。また、その他、模様刺しもいくつかあるようです。
遊佐刺し子で使われる文様の中で、一般的な刺し子の本に載っているものは柿の花刺し、柿の花つなぎ、米刺し、花刺し、十字花刺しくらいでしょうか。そのほかの文様(菱刺し、そろばん刺し、蛾刺しなど)はあまり見たことがありません。
ほとんどの模様は、一段一段あまり間隔をあけず塗りつぶすように一方向に刺すのがその特徴です。針目の大きさも何ミリと決まっていないため、ゆがんだり、刺し手によって印象が異なったり、味が出るのもその醍醐味なのかもしれません。
遊佐刺し子の模様の中には菱型をしているものも多数あり、一説には津軽でこぎん刺しを見た女性がその模様を持ち帰り、遊佐刺し子の模様に取り入れられるようになったのではないかと言われています。
菱刺しやこぎん刺しは文様の中央から刺し始め、布の織り目を数えながら刺すのに対し、遊佐刺し子は布の端から針目を数えながら刺すため、その形は時にゆがむこともあります。
そろばん刺しのような横刺しの場合、一番下の段から刺し始め、1段目は右から左へ、2段目は左から右へ、3段目は右から左へと布を交互に往復するように刺していきます。
他に、杉刺しのように縦刺しのみのものや、柿の花刺しのように横刺し、縦刺しを合わせたもの、鷹の羽刺しや枡刺しのように横刺し、縦刺し、斜め刺しを合わせたものがあります。
遊佐刺し子の保存と伝承のために日々活動なさっているLLP遊佐刺し子ギルドの土門玲子さん、池田ちゑさん、遊佐刺し子とその歴史 研究会のメンバー佐藤いづみさんによって書籍が出版されています。また、各地で遊佐刺し子の講習会が開かれたり、通販ショップのフェリシモでは土門さんと共同企画された手作りキットも販売されています。
遊佐刺し子は酒田市平田町へも伝えられ、現在も平田さしこの会により庄内さしことして、刺し子文化の継承と創作を目的とした活動がなされています。
また、庄内刺し子には他に、酒田市に属する日本海に浮かぶ離島、飛島(とびしま)に伝わる飛島刺し子があります。後から見つかった漁業用仕事着(ドンザ)にはウニやヒトデを文様にしたがんぜ刺し、まちげ刺しなどが刺されていたようです。
以下、遊佐刺し子、飛島刺し子、庄内刺し子の模様の一部を一覧にしてみました。

遊佐刺し子の伝統模様

  • あげは蝶刺し
  • 市松刺し
  • いらか刺し
  • 柿の花刺し(花刺し)
  • 柿の花流れ刺し(一目刺しの柿の花つなぎと同じ模様です)
  • 絣つなぎ刺し
  • 花紋刺し
  • 花紋つなぎ刺し
  • 変わり鱗刺し
  • 変わり杉刺し
  • 変わり蝶刺し
  • 変わり菱刺し
  • 亀甲菱刺し
  • 草刺し
  • 米刺し
  • 杉刺し(杉綾刺し)
  • そろばん刺し
  • 鷹の羽刺し
  • 竹刺し
  • 武田菱
  • 蝶刺し
  • 蝶つなぎ刺し
  • 流れ菱
  • 斜め刺し
  • 波刺し
  • のぼり蝶刺し
  • のぼり蝶つなぎ刺し
  • 旗刺し
  • 花亀甲刺し
  • 菱刺し
  • 菱つなぎ刺し
  • 菱の襷掛け刺し
  • 枡刺し
  • 繭蛾刺し
  • 向かい蝶刺し
  • 矢刺し
  • 遊佐の蛾刺し

そろばん刺し

遊佐刺し子に初めて挑戦しました。印をつけずに刺してみましたが、やはり途中で模様が曲がってしまいました。

そろばん刺し

遊佐刺し子の菱刺し

菱の実型の刃を持つ鉄製武器に由来しています。
二度目の遊佐刺し子、まだまだの出来です。菱形の大きさがバラバラでゆがんでいます。

遊佐刺し子の菱刺し

飛島刺し子

  • がんぜ刺し(ウニ)
  • まちげ刺し(ヒトデ)
  • じゃんばら刺し(海草)

がんぜ刺し

飛島刺し子 がんぜ刺し

庄内刺し子に見られるその他の模様

  • 麻の葉刺し
  • 網代刺し
  • 井型刺し
  • うろこ刺し
  • 蛾刺し
  • 篭目刺し
  • 米の花刺し
  • 十字菱かけ
  • 銭刺し
  • 花十字
  • 花菱
  • 太めつなぎ
  • 本銭刺し
  • 枡形(升刺し)
  • 矢羽根刺し

本銭刺し

本銭刺し

参考書籍

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