模様刺し
模様刺しは基本的な並縫いで良く、特別な技法はありません。好み、用途に合わせて、刺しやすい大きさの針目で、一定の間隔、均一な針目になるように刺します。
刺し子の書籍でよくぐし縫いという言葉が出てくるので、図書館で裁縫の本を読み漁りましたら、ぐし縫いと並縫いの説明のある書籍を見つけました。ぐし縫いとは主に本縫いに用い、2mmの針目で縫うこと、並縫いは主に仮縫いなどに用い、3mm~5mmの針目で縫うことと書いてありました。縫い方はどちらも同じで、表裏同じ針目でまっすぐに縫います。
ただし、刺し子の書籍では、表の針目は、裏の針目に比べやや大きくする、表3:裏2が美しいと書かれたものが多いです。 現代では、刺繍としての使途が強いので、表の針目を大きめにするようになったのかもしれません。
刺し子という名の通り、布に直角に針を刺すようにすると、針目がふっくらと仕上がります。
縫い目の交点、T字、十字は針目と針目が重ならないように、角は、針目が出るように刺すと良いようです。
また、刺し子の書籍には、縫い始め、縫い終わりの玉結び、玉止めはせず、糸を3~4針分返し縫いにしたり、糸を裏目にからめて処理をする方法が紹介されています。
一般的な刺繍の糸始末を参考にしましても、ステッチの裏側に糸をくぐらせて処理しているようです。また、クロスステッチ(2本取り)の刺し始めの処理方法に糸端を輪にしてそこをくぐらせてから糸をとめる方法がありますので、2本取りで刺し子をする場合はこの方法が使えそうです。
地域によっては一般的な刺し子の書籍で紹介されているような手法と異なるものもあります。
『嫁入り道具の花ふきん』で紹介された花ふきんは細い手縫い糸で刺しているためでしょうか、表裏均一の針目で刺しています。また、模様の中には交点の針目が交わる模様もあります。わかりやすい例では、麻の葉模様の交点に表れています。
一般的な書籍では、麻の葉の交点の針目は放射線状になるよう針目を裏に出すようにと書かれていますが、『嫁入り道具の花ふきん』で紹介された花ふきんは、中心部分で針目が交わって点のように見えます。これは秋田に伝わる独自の手法で刺しているようです。
飛騨さしこにおいても、その地に伝わる独自の手法があり、表裏均一の1mmにも満たない細かな針目で刺したものも多数あるようです。同じく麻の葉模様を見ると、交点が交わっています。
伝統模様とは別に現代刺し子作家さんによる創作模様も数多く存在し、有名なものでは故 吉田英子さんの野分(のわき)があります。また、吉田英子さんは、野分以外にも数多くの模様を考案、創作され、著書に紹介されてきました。吉田さんは博物館で見た古い労働着や風呂敷、また、昔の紋帳や浮世絵に描かれた着物から模様を図案化されてきたそうです。どの模様が創作模様であるのか定かではない部分もあり、吉田さんが考案された一部の模様は伝統模様のように紹介されているケースも見受けられます。
※下記は伝統模様として書籍に掲載された模様ですが、まれに、現代刺し子作家の方々による創作模様が含まれている場合があります。
創作模様の場合は、著作権で保護されていますので著作権侵害にご注意ください。
伝統模様
- 朝顔
- 麻の葉
- 網代
- 網文(網目)
- 霰亀甲
- 井桁格子
- 井桁に八角つなぎ(蜀江紋)
- 井戸枠
- 渦巻き文、四角渦巻き文
- うず万字
- 角紗綾形(紗綾形)
- 角七宝
- 角十つなぎ(柿の花つなぎ)
- 角寄せ
- 篭目
- 重ね枡つなぎ
- 霞つなぎ
- 花文
- 変わり毘沙門亀甲
- 変わり雷文
- 菊刺し
- 亀甲
- 組子(組子文)
- 組み七宝
- 組菱
- 格子絣
- 工事崩し
- 格子つなぎ
- 香図
- 木の葉七宝
- 紗綾形(菱紗綾形)
- 紗綾形算くずし
- 算くずし
- 三重亀甲
- 三重菱つなぎ
- 七宝つなぎ
- 十字亀甲
- 十字つなぎ(十の木繋ぎ)
- 蜀紅
- 杉綾
- 青海波
- 立三枡(立三枡文)
- 立涌
- 段亀甲
- 段つなぎ
- 千鳥つなぎ(親千鳥)
- つづき山刺し(つづき山形)
- つなぎ雷文
- 角亀甲
- 積木
- 詰田
- 飛び麻の葉
- 鳥襷(鳥襷文)
- 流し紗綾形
- 流し十字
- 斜め十字つなぎ
- 斜め方眼つなぎ
- 二重麻の葉
- 二重籠目
- 二重亀甲つなぎ
- 箱刺し(筋なし麻の葉/三つ箱つなぎ)
- 花刺し(十字七宝)
- 花菱形
- 半丸つなぎ
- 檜垣
- 菱井桁
- 菱青海波
- 菱卍
- 菱模様
- 毘沙門亀甲
- 比翼井桁
- 平井十文
- 平組み卍つなぎ
- 平三崩し
- 平詰三枡
- 平山道
- 分銅つなぎ
- 曲がり麻の葉(千鳥つなぎ)
- 枡刺し
- 松皮菱
- 丸七宝
- 丸毘沙門
- 向い亀甲
- 結び亀甲(鱗車)
- 紅葉
- 八ツ手麻の葉
- 矢羽根
- 山路
- 寄木(寄せ木麻の葉)
- 四つ組菱
- 四ツ手麻の葉
- 雷文(紗綾形くずし)
- 六角花文
◆和裁のぐし縫い
和裁では、布の表裏に同じ縫い目が一直線に出るように縫うことを運針(うんしん)と呼びます。和裁では「しつけ」と区別して、「外してはいけない ぐししつけ」のことを「ぐし縫い」と呼ぶのだそうです。基本的には本縫い=ぐし縫いのことで良さそうです。通常、本縫いをする場合、木綿物の単物は4cmの間に6~8針程度、絹物の袷物(裏地の付いている着物)は8~10針。細かければ良いというのではなく、生地の厚みや縫う場所によって、縫い方、針数を変えるそうです。厚地には大きな針目、薄地には細かな針目が基本のようです。